ミステリアスな魅力溢れる火山島、飛島【山形旅行】

旅行記

私は生まれてから高校時代までを山形で過ごしています。最近になりようやく、地元のことなんも知らないんじゃね?と思い始め、写真撮影したりを通して山形を再発見していきたいなと考えております。

今回はその中でも大ネタ、山形唯一の離島である飛島に初渡航した時の様子をお伝えします。飛島は周囲約10km、徒歩や自転車だと半日で一周できるほどの小さな島です。

離島観光としては地味な印象のところですが、今回初めて訪れてみて、今まで知らずにいたのがもったいなかったなと思えるぐらい魅力的な島だなと実感しました。

飛島は観光客を楽しませるような大々的な開発がなされている訳ではありません。その代わり火山島ならではの荒々しい大自然に触れることができます。

せっかくの旅行なのだから日常生活のあれこれを忘れて自分だけの時間を過ごしたい、そんな方に飛島はおすすめの観光先となるでしょう。割に短かい時間で行って帰ってくることができるので、酒田市内での観光プランに入れ込むのもありです。

酒田港から島の玄関口、勝浦港へ

人口で言うと山形県第三の都市、酒田市にある酒田港フェリーターミナルから島への定期船が運航しています。飛島の勝浦港へ向けて短い船旅です。

渡航にあたって悩ましいのは定期船の便数の少なさでした。4月から8月の観光シーズンであれば行き帰りがそれぞれ2便体制になっており、日帰り渡航の滞在時間は長くて5時間取れます。私が行ったのは9月の初め。こちらは行き帰りで1便しかないので船の時刻で見ても3時間しかいられません

定期船「とびしま」の運航時刻表(令和6年時点)
https://sakata-kankou.com/box/file/163/269/59ba5dc88a41a91090f3955e8772841aa00e995f

飛島には2食つきで安く宿泊できる旅館がいくつかあります。おそらく釣りやダイビングなどレジャー目的のお客さんは一泊していくのかもしれません。

私の場合とにかく一度は上陸してみたい、くらいの気持ちでしたので3時間足らずの時間ですが日帰りで行ってみることにしました。

事前情報では宿泊時以外で食事のできるところがほとんどないようでしたので、船内でエネルギー補給しておくことにしました。

幸いフェリー乗り場そばのさかた海鮮市場が朝から営業しているので、そこでほうぼうの握りをゲット。波に揺られながら食べるその味はまさに新鮮そのものでした。

フェリーから眺める酒田港は、コンテナ船がたくさん停泊し巨大なクレーンがそびえ立っており賑やかな様子。特に山並みを背景に風力発電の風車が点々としている風景は印象的です。


奥にモヤって見えるのが鳥海山。鳥海山の山頂は酒田市の隣、遊佐町にあり、県内最高峰です。数ある山々の中でもやはりその存在感は別格。

夏休み期間終わりの平日だったこともあり、席の埋まりは4分の1ほど。客層は大学生とおぼしきグループが数組、釣り目的の方が何人かいて、それ以外は日常的に通勤されている方々のようでした。

海岸遊歩道の火山台地を辿り賽の河原へ

1時間ちょっとの短い航海を終え島に上陸です。観光客の飛島での移動手段は徒歩か自転車になります。自転車は有料の電動アシスト付きか無料のママチャリが用意されています。

短時間で急いで移動したかったので、電動チャリを貸し出しているマリンプラザへ。マリンプラザは島の玄関口である勝浦港のそばにある施設で、1階が売店、2階がレストランになっています

行ってみると自転車を置いてる売店がまさかの定休日。泣く泣く無料のチャリ置き場に。西村食堂の看板が目印、マリンプラザのすぐそばです。手続きはいたって簡単、貸し出し帳に名前を記入するだけです。


夜の海で獲物をおびき寄せるための電球を吊り下げたイカ漁船。飛島の名産で有名なのがするめと飛魚の焼き干し。

この前日に酒田ラーメンの老舗である満月のワンタンメンを食べに行きましたが、あごだしのすっきりとした味わいを堪能できました。

島唯一の海水浴場である飛島海水浴場。山形出身の自分にとって太平洋の海に漠然とした憧れがあり、日本海にはどんよりと暗く沈んだイメージがあります。なので飛島の海の澄んだ青には驚きました。

海水浴場の端から海岸遊歩道が続いています。舗装路の雑な感じと、さみしく打ち捨てられた堆積物の山が異様な雰囲気をつくっています。

飛島は1000万年以上前の海底火山によりできあがった火山島だそうで、海岸沿いにはクレバスのように切り立った岩場が続いています。

荒々しい火山岩の間を縫って歩いて行くと、まるで太古の世界をタイムトラベルしているかのような気分になります。


離島に行くたびにその場の不思議さに圧倒されます。しかしさらにロマンをかき立てられるのは、またさらに海の向こうにまだ見ぬ土地があることです。

写真左に見えるのが烏帽子群島、右に見えるのが御積島おしゃくじまです。


御積島はウミネコの主な繁殖地として有名。飛島のウミネコは11月から2月にかけて飛来し、8月には島を離れるそうです。


海岸遊歩道をしばらく歩くと賽の河原と呼ばれる空間にたどり着きます。

きれいに角が削られた玉石の小山が並ぶ奥には意味深に佇む祠。この石は人工的なものでなく、風と海の流れによって自然に形作られたものといわれています。

地元の方の言い伝えによれば、石を持ち帰った者には災いがもたらされるとのこと。あまりづけづけと霊場に立ち入るのも気が引けましたが、山を崩さぬように用心しながら写真を撮りました。

海岸線の向かいには現代のものとは思えない大自然、聞こえる音は波の音と鳥たちの声だけです。霊魂がここに流れ着くのも不思議ではないでしょう。


賽の河原を抜けるとひらけた海岸にローソク岩がそびえ立っています。一見逞しさの象徴のようでありますが、いつかは波風に晒されて消えゆくものでもあります。

海岸を歩いていて目を留めてしまうのは辺りに散らばる漂着物。社会的な観点からいったら対策すべき対象であるのでしょうが、自分的にはこれらのゴミが醸し出す雰囲気にこそグッとくるものがありました。

賽の河原を経過したこともあってか、それらが人の魂といった現世の名残りのようなものを乗せてやって来たように思えるのです。

自分自身スピリチュアルな何かに傾倒しているわけではないんです。普段の生活ではひらかれないような感覚を呼び起こしてくれる、そういうところに島の持つ力を感じざるをえません。


ローソク岩の近くにある明神の杜。ここにも様々な言い伝えがありそうですが、もうお腹いっぱいなのでここを海岸線の探索の終点とし、来た道を戻ろうと思います。

ここまでの道のりですが、多少の上り下りがあるものの舗装された足場が多いのでそれほど険しいものではありません。

問題は時間の制約があることで、日帰りで島全体を見て廻りたいという方でしたら深入りせず戻ってくることをおすすめします。スタート地点の海水浴場付近でも火山島特有の荒々しい地形を堪能できることでしょう。

日本の渚百景にも選出、荒崎海岸へ

気づけば与えられた滞在時間3時間も残すところ1時間ちょっと。完全に時間配分を誤りました。

今回の旅はとにかく海を感じることができればいいと思っていたので、美しい風景が見れるといわれる荒崎海岸に向かうことにします。

荒崎は島の西岸にある海岸。大自然に囲まれた誰もいない道を自転車で駆け抜けます

タイヤがべこべこになったママチャリで傾斜のある道を走るので全身からは滝のような汗。心地よい風を受けてなんとか耐えしのぎます。


注意が必要なのは、海岸入口の案内看板にフェイクがあること

正解は下の写真のこちらの場所。ここまでの途中にもいくつか看板がありますが、森の中で道が途絶えていました。人に使われなくなって自然消滅したものと思われます。

一刻を争う状況だというのにここにも落とし穴が。写真ではわかりにくいですが手前と奥で道が二股になっています。正解は奥の道。RPGのゲームでもないんだからいい加減にしてほしいです。

ゲーム初見なので当たっている道かわからず不安でしたが、看板には荒崎の文字が。これは間違い無いでしょう。


やっと待ち侘びた風景にたどり着きました。

松の木の間から海が顔を覗かせているその景色は、子供の頃によく遊びに行っていた酒田の海岸の記憶そのもの。そう、これが見たかったんだよと海岸に着く前から感動ひとしおです。

こちらが荒崎海岸。なんでしょうか、この大小様々な石が散らばった異様な光景は。

どうもこれらは津波によって打ち上げられた津波石のようですが、これが海岸の本来の姿だと思いたくなるほどのかっこよさがあります。


荒崎海岸の目玉は海底火山により出来上がった独特の地形と、珍しい海浜植物が見れること。下の写真だと、御積島の手前に見える黒々とした溶岩台地に大昔の噴火の名残りを見ることができます

トビシマカンゾウは飛島と新潟佐渡島にのみ生息するユリ科の植物で、きれいな黄色い花を咲かせます。開花時期は5〜6月だそうで今回は残念でした。

一際目立った巨大な津波石。

ここでも御積島と烏帽子群島が風景のいいアクセントになってくれます。


まとめ

惜しくも今回の渡航はここでタイムアウト。写真を撮ることに熱中しすぎたこともありますが、さすがに島の1/3ほどしか廻れないとは思いませんでした。

ただ山形出身者として島に初めて渡れたこと、短時間の滞在にしては見れた景色が素晴らしすぎたことなどを考えると、自分的には充実した旅になったかなと思います。

事前には泊まるほどのものかなと思ってましたが、自分のようにのんびり見てまわりたい方には一泊するくらいがちょうどいいのかもしれません。何より朝夕食事付きのリーズナブルなお値段で地のものを頂けるので、またいつか宿をとって島を堪能したいなと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました